北海道大学大学院医学研究院 呼吸器内科学教室 北海道大学病院 呼吸器内科 Department of Respiratory Medicine, Faculty of Medicine, Hokkaido University

2013 特集記事

2013 特集記事特集 No.3 現地レポート

留学だより 73期 菊地 英毅

73期 菊地 英毅

私は平成21年1月より米国ボストンのダナ・ファーバー癌研究所(Kwok-Kin Wongラボ)に留学し、遺伝子改変マウスを用いた肺癌の研究に従事しております。速いもので2年と半年が経ち、当初の帰国予定である24年1月まであと半年となりました。当ラボでは新たな遺伝子改変マウスを作成したり、既存の遺伝子改変マウスを組み合わせて肺癌発生あるいは治療にあたえる影響を調べています。研究的治療内容も殺細胞性抗がん剤からさまざまな分子標的治療薬、免疫療法(抗体療法)、製薬会社とのコラボによる新規抗がん剤、など非常に多岐にわたることを手がけています。治療効果判定をMRIを用いて行うのですが、マウス用の小さなMRIで呼吸同期してMRIを撮影するのはなかなかの見ものです。私自身のプロジェクトはマウスになかなか面白いフェノタイプがみられず残念なのですが、ボスの計らいでいろいろなプロジェクトに首をつっこみ、自分のデータが誰かの論文に使われる事を期待して、日々忙しく働いています。

我が家は共働きで、子どももいますため、仕事時間は子どものスクールバスの時間から学童保育の終わる時間までに限られ、また学校の行事も多く、なかなか心行くまで仕事に打ち込むことはできず、時間がなくて昼ご飯の時間もとれない事が多いです。また仕事後も余暇の時間をもつということが出来ません。しかし逆にそのおかげで子どもの教育、学校事情を通して様々な体験も出来ています。現在娘たちは公立小学校に通っていますが、教育内容はゆとり教育どころではないおおらかな内容です。しかし、幼稚園の時から、自分の好きなものや楽しかった事などをみんなと共有する(発表する)という時間があり、プレゼンテーション能力はこんな小さいうちから鍛えられているんだなと感銘を受けます。

子どもの英語はどんどん上手になって行くのに、自分の英語はなかなか上達しないのが悲しいのですが、日本にいたときは、英語のセミナーを聴いたり、英語論文を読んでいると必ず眠たくなりましたが、最近はようやく寝なくなりましたので、少し進歩しているようです。

だんだんアメリカも居心地が良くなってきて、もっともっとここで研究生活を続けたいという気持ちもあるのですが、ここで学んだ事を生かして呼吸器内科でさらなる臨床・研究の研鑽を積みたいと考えています。正直な気持ちを言えば、自分はもっと若い時に留学に来たかったなと思います。世界の最先端で何が行われているかを知り、病気や医学を臨床と離れた立場から見る経験を得られた事は本当に幸運なことだと思いますし、自分がこの先どういう医師になるかによらず、自分の幅を広げてくれる経験だと思います。こういったことを後押ししてくれた呼吸器内科の先輩、同僚、後輩の先生方に大変感謝しております。研修医あるいは学生の皆さんも是非、海外で基礎研究を行う機会を得るように努めてみてはいかがでしょうか。